こんにちは、西表島に夫婦で移住した妻の方、よせーです。
国指定の重要無形民俗文化財、「西表島の節祭(しち)」をご存知でしょうか?
約500年以上とも600年以上ともいわれる昔から伝承され今に残る、祖納集落と干立集落の年間最大伝統行事が、西表島の節祭。
農民の正月とされる伝統行事で、その年の豊作に感謝し、また来る新たな1年の五穀豊穣と集落の繁栄、無病息災を祈願する祭事です。
節祭は旧暦の10月前後の己亥(つちのとゐ)から3日間に開催されるため、毎年日程が少し変わります。
2023年の西表島の節祭は、10月8日~10日に催されます。
とても光栄なことに、私たちは移住して1年目の2019年(10月29日~31日)から出演側として参加させてもらっています。
そこで今回は、見どころたっぷりの重要無形民俗文化財、西表島の節祭について詳しくご紹介!
節祭の裏側もお伝えしていきたいと思います。
2020年~2022年は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、公民館員および関係者限定で執り行われ一般見学禁止となっていました。
2023年は4年ぶりの通常開催の予定です。
西表島の節祭(しち)ってどんなお祭り?見どころは?
西表島の祖納(そない)集落・干立(ほしたて)集落において、数ある年間の地域行事の中で最も盛大に執り行われるのが、節祭(しち)です。
1991年に国の重要無形民俗文化財に指定。
約600年もの歴史を誇る伝統あるお祭りで、特に第2日目の世乞い(ユークイ)は、色艶やかな衣装や優美な伝統舞踊、たくましい舟漕ぎなどが奉納されるため、これまで多くの観光の方々が見に来られています。
500年以上も伝承され続ける西表最大の祭事、祖納の節祭。見所は何と言っても2日目の「世乞い(ユークイ)」。潮の干満で祭りの日程が決まるので、開催日は竹富町観光協会にて下調べを😊https://t.co/OejXN8d8bo#沖縄 #西表島 #節祭 pic.twitter.com/CR9Q1UwAaM
— スマートマガジン (@jtripmagazine) 2017年2月26日
平安王朝時代の絵巻物世界に類似するとも、決して劣らない西表島の節祭
2019 祖納公民館長談(八重山毎日新聞より引用)
西表島の節祭、秋なのになぜ「農民のお正月」なの?
節祭は農民の正月とされる伝統行事。
「秋なのになぜお正月?」と不思議に思われる方もいるかもしれません。
その理由は、集落で最も大切な作物、稲に由来します。
稲の収穫が締めくくり、翌年の新たな稲作へ準備が始まる節目のタイミング。
それが農民の正月「節祭」であり、新しい年の豊作と無病息災を神に祈る神事です。
「世乞い」と書いて「ユークイ」と読むのだそう。神への祈願の想いが込められているんですね。
西表島の節祭、開催場所と時期や日程は?
西表島の地域行事は、稲の生産サイクルである旧暦をもとに執り行われています。
節祭も旧暦、そして十干(じっかん)十二支の組合せから日取りが決定されます。
開催時期 | 毎年旧暦10月前後の己亥(つちのとのゐ)から3日間 | |
集落 | 祖納、干立、船浮 | |
会場 | 祖納 | 前泊海岸 |
干立 | 干立御嶽、前の浜 | |
船浮 | 船浮御嶽、船浮湾 |
実は節祭は3つの集落で開催!そのうち祖納と干立の節祭が、国の重要無形民俗文化財です。
節祭の日程は3日間ですが、観光で見に来るならメインは、第2日目のユークイの日!
というのも下記のとおり、元旦にあたるのが第2日目だからです。
第1日目 | 年の世 | 家庭行事、料理準備、リハーサル |
第2日目 | 正日 | 祭の中心、船元の御座(前泊海岸)にてユークイ行事 |
第3日目 | 止め | 大平井戸にて水恩感謝行事、集落内の清め儀式 |
第1日目は大晦日として準備作業が主。第3日目は締めの儀式となっています。
祖納と干立の節祭、共通点は?
重要無形民俗文化財である、祖納と干立の節祭。
2つの集落は隣同士であり、日頃からも親しい間柄です。
主な共通点がこちら。どちらのミリク様や奉納芸能、ハーリーも見物ですよ!
- 祭の日程
- 五穀豊穣と安寧を祈願
- ミリク様という神様が登場
- 奉納芸能がある
- ハーリー(舟漕ぎ競漕)がある
全く同じ日程で行われるため、それぞれの集落の方々は、互いの節祭を見たことはないそうです!
ここが違う!祖納と干立の節祭
共通点が多い祖納と干立の節祭ですが、異なる点があるのが地域の特徴に。
特に大きな違いが「3」の登場人物です。
- 開催場所
- 式次第(祭のスケジュール)
- 登場人物 など
地域の豊穣と平安祈る オホホなど多彩な奉納芸能 西表祖納・干立で節祭 https://t.co/dj3WRu4CA3 pic.twitter.com/oIVNFQhlz8
— 八重山日報 (@YaeyamaNippou) 2019年10月30日
干立の節祭の特徴
異国人風の格好をしてブーツを履いたオホホ様が登場するのが、干立の節祭。
「オホホホホ...」という笑い声や、お金を見せつけて子どもや女性の気を引こうとしたりする滑稽なしぐさが独特です。
(上記:2019八重山日報のツイート左写真)
祖納の節祭の特徴
全身真っ黒の装束を身に着けたフダチミが登場するのが、祖納の特徴。
上の写真で先頭を歩いているのがフダチミです。(2019八重山日報のツイートでは右写真)
フダチミは、奈良時代の貴族行列の名残だとか、異国人にさらわれた少女が成人後に帰島した様子だとか諸説あり、神秘的な存在です。
共通点が多いのに、全く異なる登場人物がいるのが興味深いですね!
西表島の節祭、必見の見どころは?
ではここからは私たちも出演した祖納の節祭についてお伝えしていきます。
特におすすめしたい主な見どころはこちら!
- ミリク様
- ミリク行列
- アンガー行列
- 奉納芸能
- ユークイ儀式(舟漕ぎ競漕)
ひとつずつ簡単にご紹介します。
◆福々しいミリク様
この方がいなければ、節祭ユークイ行事が始まりません。
ミリク様は、島の繁栄と平和をもたらす節祭象徴の神様です。
◆ミリク行列
華やかな旗(二番旗)を先頭に、ミリク様が率いるミリクの伴の行列。
ミリク節の唄声・太鼓と三線の音と共に、美しい前泊浜に色鮮やかな伝統衣装が映えます。
◆アンガー行列
祖納、干立で伝統の節祭 西表島 - 八重山毎日オンライン https://t.co/s60ZjkMpgt #八重山 pic.twitter.com/ykPhE4e5uy
— 山山山山山山山山山 (@yaeyama3) November 10, 2017
三番旗を先頭に、ユハナ節を唄い踊りながら入場するフダチミとアンガーの行列。
ミリク行列とは対照的に、黒と白の装束がなんとも神秘的な雰囲気です。
◆奉納芸能
浜で旗頭を囲んで奉納される巻踊りと、船元の御座で奉納される舞踊があり、古から続く伝統の厳かな雰囲気に包まれます。
さらに浜で行われる舟子(男性)による狂言や棒芸も、迫力があって見物です。
◆ユークイ儀式(舟漕ぎ競漕)
2艇のサバニ(伝統的な手漕ぎ舟)に計22人の選ばれし船頭・仮船頭・前乗り・舟子らが乗り、3周舟を漕ぎます。
2~3周目は競漕ですが、「海の彼方から幸を満載して戻ってくること」が目的。
全力を尽くして漕ぐ姿に、浜で待つ女性たちも無事を祈って声援を送り続けます。
西表島節祭ユークイ行事のハイライトです。
西表島の節祭、集落総出の準備は15日前から
年間最大の伝統行事に向けて、集落全体としては約15日前から準備が開始されます。
芸能はもちろん、買い出しや料理、会場設営や進行に至るまですべて住民の手で作り上げるため、この時期は集落のおとなから子どもまで節祭一色になります。
- 地域内清掃作業
- 歌の練習
- 立ち稽古(歌、振り、踊り、三線など芸能)
- 舟漕ぎ練習
- リハーサル
- 山菜など収穫
- 調理、料理準備
- 海岸清掃
- 会場設営
- 招待状作成 など
特に男性陣は、連日夜遅くまで大忙しだったので、当日まで体力が持つのか心配してしまうほどでした。
西表島の節祭、芸人衣装を大解剖!
では!移住して半年ちょっとだった私たちが、どんな役・衣装で参加させてもらったのか、ご紹介しちゃいます。
身内には、2人ともかなり似合ってると言われたのですが、いかがでしょうか??
舟子(ふなこ)の衣装
あきひこは舟子の一員に。
男性陣の大半が舟子の衣装で、身に着けているものはこちらです。
- ハチマキ
- ウチクイ(頭に巻いている布)
- サシマタ
- 襦袢上下
- ケハン(ふくらはぎに巻いている黒白の布)
- タスキ
- アダン葉ぞうり
伝統的衣装に身が引き締まる思いがしました。
銭引(じんぴき)の衣装
女性陣は役によって衣装の種類が数パターンに分かれています。
よせーは、ミリク行列の一員の銭引という役でした。
- カンプー(ヘアセット)
- 青サージ(頭に巻いている布)
- 襦袢上下
- 銭引き用着物
- アダン葉ぞうり
銭引の衣装、かわいくて着れて良かったです♡
ちなみにアダン葉ぞうりはこんな感じで、皆さん鼻緒を少しずつ変えて自分のが分かるようにしていました。
アダン葉ぞうりは職人や住民の方がすべて手作りで作っていて、今やなかなか貴重なものです。
西表島祖納集落の節祭、メインの2日目!ユークイ行事に密着(2019年)
西表島祖納の節祭に興味を持ってくださった方のために、第2日目、節祭メインの日のスケジュールをご紹介します!
2019年10月30日、ユークイ吉日をベースにお話ししますね♪
当日準備~スリズ出発まで
時間 | 内容 |
04:00 | 一番ドラ(ユークイ吉日告示) |
06:00 | 二番ドラ(朝作業開始) |
11:00 | スリズへ集合 |
12:00 | スリズ儀式開始 |
12:30 | 一番旗スリズ出発 |
13:00 | 二番旗とミリク行列、 三番旗とアンガー行列出発 |
当日はめちゃくちゃ朝早くにドラが鳴らされ、ユークイ吉日の最終準備が開始されます。
男性陣が会場を仕上げている間に、女性陣は髪を結ったり準備をして、時間になったらスリズ(公民館)に集合です。
スリズでの儀式の後は、船頭と舟子、ミリク行列、アンガー行列に分かれてそれぞれ伝統的な唄を歌い踊りながら、浜へ向かいます。
ここからは芸人として出演しているので、写真撮影できてなくて…。インスタの力を借りて画像をお届けします。
前泊海岸入場~舟漕ぎまで
13:30 | 舟浮かべの儀式 |
13:40 | 一番旗を先頭に、船頭・舟子入場 |
13:50 | 二番旗を先頭に、ミリク行列入場 |
14:00 | 三番旗を先頭に、アンガー行列入場 |
14:10 | 開会行事 |
14:40 | ミリク神の座とぅりむち |
14:50 | 奉納舞踊(祖納嶽節、西表口節、高那節) |
15:10 | 男子狂言、棒芸 |
15:40 | 奉納舞踊(下原節、まるまぼんさん) |
15:50 | ミリク神の座とぅりむち |
16:10 | 婦人アンガー巻踊り |
それぞれの行列が浜から入場。
ミリク様をはじめミリク行列とアンガー行列が、船元の御座に着座して開会されます。
2019年は、奉納舞踊が5つとアンガー巻踊り、船子アンガー巻踊りと芸能がたくさんありました。
あきひこも棒芸がんばりました!(下記は第3日目に撮れた写真です。)
舟漕ぎ~舟元行事閉会
16:30 | ユークイ儀式開始 |
17:10 | ミリク神の座とぅりむち |
17:20 | 男子舟子アンガー巻踊り、獅子舞 |
17:40 | 万歳三唱 |
17:50 | ミリク神、全員スリズへ戻る |
18:10 | スリズの座トゥズミ儀式 |
節祭ユークイ吉日のハイライト!
男性陣から選ばれし22名が紅白に分かれて、舟漕ぎ競漕です。
1週目は「ユークイの儀式」
2~3週目は勝負で、最後に沖の小島、まるま盆さんを周り帰ってきます。
とにかく無我夢中でヤッコ(櫂)を握りました!
22名の勇ましくたくましい男性陣が、全身全霊で漕ぎ進む姿は圧巻。
女性陣は男性陣が無事に戻ってくるように、浜でガーリを踊り精一杯声援を送り続けました。
2019年は、赤舟の勝ち!
けれど勝敗に関わらず、気持ちを一つにして力を尽くした全員の雄姿をたたえ、海の彼方から持ち帰った豊年満作の世を喜び合います。
ずっとガーリで応援していたので腕が痛かったですが、とても満たされた一体感に感動していました!
競漕のあとは男子巻踊りがあり、最後の儀式は獅子舞による浜のお清め。
そして入場したときと同様に、船頭と舟子行列、ミリク神とミリク行列、フダチミとアンガー行列が順に船元の御座を後にしていきました。
再び歌いながらスリズに戻り、スリズでの儀式をひと通り終えたら、節祭第2日目、ユークイ儀式の終了です。
朝から晩まで1日中で疲れましたが、別世界にいたような不思議な気分と満たされた気持ちを経験しました。
(本当は、住民にとっては第3日も大切な日ですが、この話はまた機会があったらということで☆)
古と今をつなぐ、西表島の節祭
国の重要無形民俗文化財「西表島の節祭」について、お祭りの内容、見どころ、衣装などをお伝えしました。
約600年もの間、受け継がれてきた伝統と人々の願いや想い。
そんな尊さを感じながら、西表島の節祭に興味を持ち続けていただけたら幸いです。
私たちもまだまだ知りえていないことばかり。これからも少しずつ学んでいけたらいいなと思っています。
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